現代にひらく、茶室の再解釈
– 鎌倉茶々 御成店 –

  1. インテリア

鎌倉茶々 御成店のデザインは、単なる抹茶提供のための店舗空間ではなく、日本の喫茶文化に内在する精神性を、現代においてあらためて立ち上げる場として構想した。私たちが着目したのは、茶室が本来備えている、感覚を静かに研ぎ澄ませ、素材、所作、そして時間の流れそのものへと意識を導く空間の力である。本計画では、その本質を抽出し、歴史と文化の蓄積を持つ鎌倉という土地にふさわしい空間として再構成することを目指した。

空間は、華美な装飾に依拠することなく、色彩、素材、光の関係性を丁寧に整えることで成立している。主役である抹茶の鮮やかな緑、そして一杯が差し出される所作そのものが際立つよう、空間全体を静かな舞台として設計した。深みのある壁面と什器は、視覚的な静けさを支える背景として機能し、訪れる人の意識を自然と商品と体験へと導いていく。

壁面には和紙を採用し、日本の伝統素材が持つ繊細な質感と、光を受け止めるやわらかな特性を空間に取り入れた。和紙は光を穏やかに拡散し、その表情に微細な揺らぎを生むことで、空間に上質な緊張感と静かな温度をもたらしている。そこに木部の明快なラインを重ねることで、柔らかさと構築性が共存する、簡潔でありながら豊かな表現を実現した。とりわけ天井に連続する木のフレームは、茶室建築に見られる秩序と律動を現代的に翻訳した要素であり、空間に明確な骨格を与えると同時に、来訪者の視線と身体感覚を穏やかに整えていく。

また、鎌倉という場所性そのものも重要な設計要素として捉えている。歴史ある街並みと穏やかな時間の流れを背景に持つこの土地において、店舗は単なる販売の場ではなく、日本文化の美意識へと触れるための入口であるべきだと考えた。大きく開かれた開口部によって街との連続性を保ちながらも、店内に足を踏み入れた瞬間、意識が自然と切り替わり、抹茶と向き合うための静かな集中が生まれる。その感覚の転換そのものが、この空間体験の本質のひとつとなっている。

本計画は、伝統的な茶室の形式を表層的になぞるのではなく、その思想を読み解き、現代の感性と店舗空間に求められる機能性の中で再編集したプロジェクトである。抹茶の香り、和紙にやわらかく受け止められた光、木の秩序、そして空間に満ちる静謐な気配。それらが一体となることで、この場所は、抹茶を味わうという行為を、日本文化の深層に触れる体験へと昇華していく。

鎌倉茶々 御成店

用途
カフェ
場所
JR鎌倉駅
竣工
2026年3月
構造
木造
階数
1階
URL
https://kamakura-chacha.com/store/
鎌倉茶々鎌倉茶々
実績の画像
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