日本橋三越の原点は、一軒の呉服屋にある。布を選び、柄を見立て、暮らしを彩る。その歴史を手がかりに、EQUALLYの新しい店舗を計画した。
三越という場所には、少し背筋が伸びるような特別さがある。そこに、一枚のクレープを囲んで自然と会話が始まる、
EQUALLYらしい親しみやすさを重ねたいと考えた。空間の骨格には、日本橋三越のルネサンス建築が持つ均整と品格を取り入れ、織物や和紙、金属に残る手仕事の表情で、やわらかさを添えている。
壁面のアートには、京都・西陣で特注した織物を用いた。呉服屋から始まった三越にとって、布は商いの原点につながる素材である。製作を手がけたのは、150年以上にわたり、寺院の袈裟や装飾品などに用いられる金襴を織り続けてきた織元。糸の太さや織り方によって生まれる細かな起伏が、光を受けて、見る角度ごとに異なる表情を見せる。
その織物に、職人が一枚ずつ叩いた金属を重ねた。名古屋で鍛金を施し、広島で特殊な粉体塗装によって仕上げている。
槌目やわずかな揺らぎを残すことで、金属にも手の跡が感じられる。織物の上を流れるラインには、呉服屋から百貨店へ、
そしてこれからへと続く三越の時間を託した。異なる土地の職人の仕事が、この壁面でひとつになっている。
中央のペンダント照明には、高知の土佐和紙を用いた。薄い紙を手でちぎり、透明なアクリルの筒に一枚ずつ貼り重ね、ところどころに青い染料や顔料をにじませている。
光を灯すと、紙の繊維や重なり、青の濃淡が浮かび上がる。ちぎった紙の縁も、染まり方も少しずつ違う。その不揃いな表情が、端正な空間の中に穏やかな気配をつくっている。
糸を織り、金属を叩き、紙を重ねる。素材に手を加え、それぞれの持ち味を引き出していく仕事は、EQUALLYのお菓子づくりとも通じている。一枚の生地に素材を重ねるクレープと、布や紙からつくる空間。扱うものは違っても、人の手を重ねることで生まれる豊かさを大切にした。
買い物の途中にふと足を止め、甘いものを選び、ひと息つく。
三越の歴史と職人の仕事が、その何気ない時間の背景になる。
少し背筋が伸びて、それ以上に頬がゆるむ。そんな場所を目指した。







