光と余白がもたらす、心地よさの再構築
– KAMIAKITO Dental Clinic –

  1. インテリア

本計画は、既存の歯科医院に対するリニューアルプロジェクトとして、内装の刷新にとどまらず、“治療を受ける時間そのもの”を見つめ直す設計提案として進められました。

まず、着手したのは空間の構成要素の再編集です。これまでのレイアウトは、時代とともに設備が増え、什器や間仕切りが無秩序に配置されることで、視界を遮り、圧迫感のある環境になっていました。
特に大きな収納や造作什器は、空間にとって必要以上の「存在感」を放ち、患者様の心身を知らず知らずのうちに緊張させていたのです。

そこで私たちは、視界と動線の“整流”を目指し、歯科ユニットの入れ替えを機に、レイアウトそのものを見直しました。機能はそのままに、家具や什器のスケールを可能な限り小さく、低く抑え、視線が奥へと抜けていく構成へ。圧迫感を排除した結果、空間に「呼吸」が生まれ、患者様が肩の力を抜いて過ごせる環境へと変わりました。

もう一つの重要なテーマは、「光が主役になる空間」の創出です。今回の設計では、既存の窓位置や採光条件を活かしつつ、光の入り方とその滞在時間に着目しました。自然光が優しく差し込む待合や診療スペースでは、時間帯によって表情を変える光が、素材や壁面に豊かな陰影を生み出します。人工照明では決して再現できない「移ろい」がそこにあり、患者様にとってただ治療を受けるだけでなく、“静かな時間”を過ごす場所となることを意図しています。

設計の基調には「シンプルさ」を据えました。医療空間にありがちな過度な演出や清潔感の押しつけではなく、本質に立ち返った“静けさのある美しさ”を目指しています。装飾を控えた壁面、無垢材やマットな質感を持つ建材、ナチュラルなカラーパレット──どれもが主張せず、静かに寄り添う存在として空間を構成しています。

私たちは、デザインの力で歯科医院を「快適」な場所に変えるのではなく、「整える場」として再定義したいと考えました。来院する人が、身体だけでなく、こころまでも少しリセットできる場所。医療技術の進化とともに、その“場”が持つ力にも目を向け、空間が患者様に寄り添う新しい歯科医院の姿を描いています。

この設計は、未来の歯科医療空間に対して私たちが提示する、一つの「あり方」の提案です。

実績の画像
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