今回は、kusukusuが始めて環境循環型の設計として、始めてオーナーさんにも納得いただいて取り組んだ店舗「FURURI(フルリ)」を紹介したいと思います。
FURURIは、祐天寺にあったカフェです。残念ながら現在は閉店してしまったのですが、オーナーさんと初めてやりとりをしたのは、2017年9月のことでした。「物件が決まったのでデザインをお願いしたい」とご連絡をいただいて、より詳細を聞いていけば物件が急遽決まったとのこと。店舗デザインをどうしようかと調べて「いいな」と思った5つのデザインのうち、4件がkusukusuの手掛けたものだったそうです。とはいえ、突然決まった店舗の開業だったので、コンセプトや方針の土台もない状態。唯一の手がかりである「人が集うところをつくりたい」というオーナーさんの想いから、お店のカタチを具体的にしていきました。
kusukusuではいつも、店舗をデザインする前にブランディングを考えます。「人が集う」というところから着想し、「新しいカルチャーを生む場所」とまとめた提案書とともにオーナーさんを訪ねました。
提案書に記したカルチャーの中身は3つ。1つ目は日常のカフェに寄り添ったカルチャー、2つ目は自然環境にまつわるカルチャー、3つ目は食にまつわるカルチャーです。カフェがなかった場所にコーヒーを飲む文化を生み、お店ではコンポスト化した生ゴミで野菜が育ち、それが料理に活用されることで循環が生まれる、といった内容です。当時は「パーマカルチャー」というオーストラリア発の文化も日本で定着しつつありました。オーストラリアに留学したことのあるオーナーさんにもご快諾いただけて、環境配慮型の設計を大々的に店舗全体的に取り入れられることになったのです。
実際に設計した店舗は、居抜きでした。必要なものはある程度揃っていたものの、イメージが全く違ったために全面的に改装することに。しかし、環境配慮型の店舗ということを考えたときに新しい建材を使ったのでは、コンセプトに合いません。そこで、もともと使われていた木材を再利用することにしました。設計には、廃材をつかった 家具や再生ガラスを使用した照明、生分解性プラスチックでできたプランター、石灰が原料で環境に優しい塗料なども取り入れています。
なかでも思い出深いのは、キッチンの背面の壁。遠目にみるとなんだか普通のモザイクタイルのようですが、鎌倉の陶芸家さんの失敗作をもらってきて、オーナーさんと一緒に自分たちで割って貼り付けました。作業は地味で大変でしたが、そこにはオリジナリティが生まれ、お客さんとの会話が始まるきっかけにもなっていたようです。
もう1つ特徴的だったのは、コンポスト。調理の過程で出た生ゴミをコンポストに入れ、できた肥料は屋外に植えたハーブにあげ、十分に育ったハーブはお店で出していたアイリッシュ・コーヒーの仕上げに使用していました。コーヒーを淹れる時に出たカスも店内の消臭・除湿や植物への肥料に使い、なるべく店内で循環が生まれるような工夫をしていました。
こうした取り組みをしている飲食店は当時では、珍しかったのではないでしょうか。kusukusuができる限り入れたこうした環境配慮型の設計は、これからの時代ではスタンダードになるでしょう。
では、これ以上にできる取り組みはなんでしょうか? 例えば、洗剤。界面活性剤を含まず自然由来の成分が原料の製品を選ぶことが基本になるはずです。それから、マイボトルを持ち歩いていない人を対象とした、環境に良いテイクアウト用のカップ。ステンレス製のコップをデポジットで貸し出して、それを店頭で使うと値引きというシステムとかどうでしょう。FSC認証の紙コップをつかっても、結局はゴミが出てしまいます。これならは、何回でも使えるしマイボトルを持ち歩きたくない人も手軽に挑戦してくれるかもしれません。水道や光熱も、水をろ過して何度も使えるシステムを導入できたらおもしろいだろうし、再生可能エネルギーで発電している電力会社と契約したりするのも1つの手です。究極をつきつめると、太陽光パネルや地熱発電などを設置してみたら循環をより実感できるかもしれません。
時代が進むにつれて、環境循環型の技術やアイデアはアップデートされていくでしょう。それをどんどん取り入れて行き、いずれは完全環境循環型の店舗をたくさん作って、日本が世界の環境先進国になることが、kusukusuの目標であり僕の夢でもあるのです。