これからの循環型コミュニティ

僕がデザイン事務所をオープンしたのは、7年前の2013年です。建築や店舗運営など、事業にかかわるいろんな人が笑顔になってほしいという願いを込め、事務所は「kusukusu(クスクス)」と名付けました。でももうちょっと視野を大きくすると、事業にかかわるのは人だけではありません。自然環境、もっと考えると地球にも、やさしさが広がっていくのがよいと考えています。

笑顔は、楽しさや嬉しさから生まれます。そして、人同士や何かとの関わりで、初めて見ることができるものです。つまり、ひとつ作った輪に笑顔が生まれると、どんどん広がっていくものなのです。例えば、僕が携わっている仕事である「デザイン」を起点に考えてみましょう。

地球にも優しくて人にも笑顔をもたらすことから発想し、街中にコンポストを設置すると、人が集まる「コンポスト×コミュニティ」というデザインが浮かびあがります。家庭の生ゴミを持ち込む人や、できあがった肥料を持ち帰る人……。最初は関わり合いも最低限かもしれません。でも、顔見知りになり、挨拶を通して少しずつでも笑顔が生まれれば、コミュニティの輪はどんどん広がっていく。大切なのは、無理をしないこと。誰かがガマンして難しい顔をしているよりも、助け合いながら笑顔になれるコミュニティを形づくることで輪が連鎖していきます。その先には、とても力強い資源の循環と人の思いの循環が誕生するかもしれません。

では、循環型のコミュニティの形が今後どうなるか。僕にはプロジェクトの構想がいくつかあって、異なる場所の取り組みが特徴を貸し合う「CST(Capability share type)」と、複数の能力が一箇所に集まる「ABT(ability building type)」の2つにおおまかに分けられると考えています。

まずは「CST(Capability share type)」。これは能力を共有するシステムのこと。これから先、使う人のいない空き家や遊休地はどんどん増えていきます。使わない土地で植物工場や農園を運営したり、コンポストを中心としたコミュニティを作る、といった取り組みをしている地域が連携していったらどうなるでしょう。

例えば、葉山がコンポストに力を入れていて、鎌倉が植物工場をやっているとします。葉山でつくられた肥料をつかって鎌倉で野菜を育て、鎌倉で育った野菜の切りくずは葉山へ戻る、という循環型の行動が選択肢に入ってくるでしょう。距離の近い自治体が連携を結ぶことができたら、自治体を超えた住民のコミュニティも生まれるはずです。

これをさらに小さい範囲に凝縮すると、「ABT(ability building type)」になります。5階建てのビルの、2階と3階が空いていると仮定します。いままでだったら、家賃を下げて、少しでも居住者を入れて……という話になりますが、そこに植物工場を入れてみる。そして、1階はカフェに、4階と5階は居住区に。これで、1階と4、5階で出た生ゴミを植物工場へ、収穫した野菜はカフェと居住区へ、という循環ができあがります。

このビルのすごいところは、太陽光で電気を生産したり、水を濾過して循環させたり、と環境負荷の低い取り組みを複合的に取り入れることができること。専門技術が必要な部分はその分野に秀でた企業に参加してもらうことで、持続的な運用が望めます。異業種間の関わりも生まれるプロジェクトにすることができるので、(1)テナントなどのビルの入居者(2)お客さんなどのビルの利用者(3)プロジェクトの関係者、の異なる輪が交差する拠点にもなりえます。

こんな取り組みが増えたら、人々の気持ちも豊かになって技術面的にも進歩でき、自然にも優しい社会に成長すると思うのです。