環境循環型のライフスタイルは自然と地域経済の回復を実現させる

kusukusuが考える環境循環型とは、すべてのものを自然に戻すこと。空から降った雨が地面に染み込み、地下水となって海へと流れ、蒸発して空中の水蒸気になるように、地球上の物質も形を変えながら循環しています。人間は、あらゆる資源の循環の一部分を借りながら生活しているのです。
だからこそkusukusuの手掛ける設計は、一巡りするのに何百年もかかる石油由来の素材を極力使わないようにしています。使っているのは、基本的に土や木。この2つは自然にある形に戻るのが早く、環境にかかる負荷が低いのです。使い終わったら土壌に還し、少ない工程で循環のサイクルに乗せられます。

少し建築の話をしましょう。1970年ころからツーバイフォーの建築法が輸入され、アメリカやカナダから加工済みの製材用材などが輸入されるようになりました。

それまでは一般的だった大黒柱を立てる軸組工法に比べて、バルーン・フレーム工法でできて完成の早いツーバイフォーは、当時はとても画期的でした。でも素材の性質を考慮に入れると良いところばかりではありません。日本で育った木ではないので、湿気に弱く歪みやすいし、長持ちするかというとそうでもありません。
一方、日本の夏と冬を経験した木は、湿気や季節の変化など、日本の気候に適応しています。日本で育った木で建てた家は、きちんと手入れをしていけば、時代を超える建物にもなるでしょう。すぐに作ってすぐに壊すことを続けると、自然はじきに壊れてしまいます。だからこそ、地元のものを使い、自然環境に負担のない循環を意識することが大切なのです。

地元のものをつかって地元に戻すという資源の循環ができれば、経済も地元で回り始めます。木材だけでなく地元でとれた野菜や魚を近所のお店で購入して、使わない部分や使い終わったものはすべて肥料にして野菜を育てる。石油由来のプラスチック製品はなるべく買わない。こういうライフスタイルが広がっていけば、環境の回復と地域経済の活性化の両立が実現するはずです。

環境循環型について友人や知人と話すたび、「初期から中期の江戸時代に戻る」といった結論に辿り着きます。18世紀半ばからの産業革命の影響をまだ受けず、 必要なものは人の手で作り出され、古くなったものは、ほかの用途で使い倒すような暮らし。そういった生活をしていると、行動や選択がどんどんシンプルになっていきます。暮らしがシンプルになればなるほど、やる事や考え事が減り、自分と向き合う時間が増えていきます。江戸時代の人々は、現代人よりもはるかに自分と向きいながら生活していたと思います。

自然素材をシンプルに使う環境循環型の店舗は、オーナーさんが自分自身と向き合い、暮らし方や考え方を突き詰める場所。そして、お客さんがオーナーの哲学や暮らし方を受け取る場所でもあります。廃油からキャンドルを作ったり、ゴミをコンポスト化したり、コーヒーの出がらしを肥料に使ったりしている店舗があれば、それを生活に取り入れるお客さんもいるでしょう。お店を起点に、お客さんを介して環境循環の考え方が広がっていけば、環境循環型のライフスタイルがどんどん大きな潮流となっていきます。そんな将来を思い描きながら、私たちは店舗をデザインしています。